奥手だったエンジニアが、”自然に話せる人”と出会うまで

Aさま(50代・男性・初婚)は、システムエンジニアとして二十年以上、専門の道を歩んでこられた方です。まじめに、誠実に仕事に打ち込む――その姿勢は素晴らしいものでしたが、こと恋愛となると、ご自身でも「昔から奥手なほうで」とおっしゃる、少し照れ屋な一面をお持ちでした。

面談でお話をうかがうなかで見えてきたのは、Aさまが決して出会いを望んでいなかったわけではない、ということです。むしろ人一倍、家庭への憧れを持っていらっしゃった。ただ、自分から声をかけたり、積極的に動いたりするのが得意ではなく、気づけば同世代の友人たちが次々と家庭を築いていくのを、どこか横目に見ているような日々を過ごしてこられたのです。「このままではいけない」――その一念で、Aさまは勇気を出して当相談所を訪ねてくださいました。

奥手な方の婚活を支えるうえで、私たちが何より大切にしているのは、無理をさせないことです。話すのが苦手な方に「もっと積極的に」と発破をかけても、かえって萎縮させてしまいます。Aさまには、ご自身のペースで、少しずつ相手と距離を縮めていけるよう、一つひとつのお見合いや交際を丁寧にサポートしていきました。趣味は映画や旅行、読書。穏やかで内省的な時間を大切にされる方だと、対話のなかで少しずつ伝わってきました。

国際結婚への不安も、Aさまにはありました。未知の世界に飛び込むことへの戸惑いは、奥手な方であればなおさらです。けれど私たちは、その不安に一つひとつ丁寧にお答えし、時には背中をそっと押しながら、Aさまが安心して相手と向き合える環境を整えていきました。

そして出会われたのが、今の奥さまです。驚いたことに、Aさまは初めて会ったときから、この女性とだけは不思議と自然に話すことができたといいます。穏やかで、こちらの話をしっかり受けとめてくれる人。飾らない会話を重ねるうちに、「この人となら一緒に生きていきたい」と、素直に思えたそうです。奥手なAさまがAさまのまま、ありのままでいられる相手――それこそが、生涯の伴侶にふさわしいご縁でした。

奥手な方をお支えするとき、私たちはよく「話すのが上手になる必要はありません」とお伝えします。婚活の場では、つい「気の利いた会話をしなければ」と気負ってしまいがちですが、それは大きな誤解です。お相手が本当に見ているのは、話の巧みさではなく、聞く姿勢や、誠実な受け答え、そして自分に向けてくれる関心です。Aさまには、無理に会話を盛り上げようとするのではなく、相手の話にきちんと耳を傾け、感じたことを素直に返す――それだけを心がけていただきました。

もう一つ、私が意識したのは、Aさまが安心できるお相手を選ぶことでした。同じ物静かなタイプでも、相手が急かさず、こちらのペースを待ってくれる人であれば、奥手な方でも自然と心を開けます。読書や映画といったAさまの趣味は、内面の豊かさの表れです。私は、その静かな知性を魅力として受けとめてくれる、落ち着いた女性との出会いを大切にしました。

実際にお見合いを重ねるなかで、Aさまが「この方とは、なぜか黙っていても気まずくないんです」と話してくださったお相手がいました。それが、今の奥さまです。沈黙が苦にならない関係――これは、実はとても得がたいものです。言葉を尽くさなくても分かり合える安心感は、生涯にわたる夫婦生活の、何よりの土台になります。奥手なAさまだからこそ見つけられた、かけがえのないご縁でした。

ご成婚後、Aさまは休日に二人で映画を観たり、旅行やお出かけを楽しんだりと、以前とは見違えるほど豊かな毎日を過ごしていらっしゃいます。当たり前の日常が、こんなにも心を満たしてくれるものだったのかと、しみじみ感じておられるそうです。

婚活の現場では、「奥手であること」を弱点だと思い込み、必要以上に自分を大きく見せようとして、かえって空回りしてしまう方をよく見かけます。けれど、それは本当にもったいないことです。無理につくった姿は、結婚後には必ず綻びます。反対に、素のままの自分を受け入れてもらえた関係は、何十年経っても揺らぎません。私がAさまにお願いしたのは、ただ一つ、「がんばって面白い人になろうとしないでください」ということでした。ありのままのAさまを好きになってくれる人こそ、生涯の伴侶にふさわしいのですから。

国際結婚は、実は奥手な方と相性の良い選択肢でもあります。日本人同士の恋愛にありがちな「駆け引き」や「察し合い」よりも、お互いを一から理解しようと歩み寄る、まっすぐなコミュニケーションが基本になるからです。飾らず、誠実に向き合う――それが得意なAさまにとって、この道はむしろ、自分らしさを活かせる場だったのだと思います。

「自分は奥手だから」と、出会いを諦めている方は少なくありません。けれど、話すのが苦手なことは、決して欠点ではありません。あなたを自然体にしてくれる相手は、必ずどこかにいます。Aさまのご成婚が、そんな一歩を踏み出す勇気につながりますように。